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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

と、彼の妻女は、女らしい細心な一策をささやいた。九叔はそれを聞くと、

「なるほど! そいつあ妙案だ。よし、そうしよう」

と、即座に腹をきめ、「おまえがそんな智恵者とは、多年連れ添っていながら、いま知ったよ」と、膝を叩いた。

ところへ、部下の隠亡が、三人でやって来た。あの後で、王婆は自分らを下にも措かずもてなし、銀子十五両を出して「仏の供養ですから、お三人で分けて下さい」と、いったという。その下心は、検死の判証をどうかしてくれということらしい。

「いいじゃねえか」と、九叔はあっさりいった。

「くれる物は、取っておきなよ。判証は俺に代って、おめえたちでしてやるがいいや。何しろ俺は、急病人だからね……。なに? 役署のほうが違反になるだろうって。大丈夫さ、そいつあ。なンたって、西門慶旦那がついていらあね。いいようにするだろう」

こんな風に、通夜の三日祀りもすぐすんで、武大の葬儀は、無事に終った。ところが、城外の化人場でそれが行われた直後、そっと何九叔がやって来て、前もって、彼が取り除かせておいた武大の遺骨の一片を持ち帰ったとは、世間、誰も知った者はなかった。