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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

金蓮もその尾について、

「ね。二郎さん。お隣のおばさんには、良人が病んでいるうちからお葬式のことまで、ほんとにご厄介になったのよ。あんたからもよくお礼を仰っしゃって下さいな」

と、相槌を打った。しかし武松は、まだ腹から礼をいう気にはなれないらしい。

「どうも夢のようだな。なんとも変だなあ?」

「弟さん。何がそんなに変だというのさ」

「だって、日頃はあんなに達者な兄貴だ。それが胸の痛みぐらいでコロリと逝ってしまうなんて」

「だけど案外、その達者があてにならない例は、世間でよく見ることだからね。だから坊さんがいうじゃないか。無常迅速、人の命は露みたいなもンだって」

「して、兄の遺骸は、どこへ埋葬したんですか」

「三日三夜、通夜や御法事をした後で、かたのとおり火葬に附しておいて上げたよ」

「それから、今日で幾日目ですえ?」

「あと二日で、ちょうど四十九日の忌明け。忌明けを前に、弟さんが帰ってくるなんて、やはり争えないもんだね」

「いや、また出直して伺いましょう。こんなことたあ知らなかったんで」

武松は半ば眩々としたまま、ぷいと戸外へ飛び出してしまった。やや我に返っていたのは、外の風に吹かれてからのことである。