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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
と、不敵な気を持ち直すまでの、ほんの寸時を措いていただけなのだった。
――そして、降りて来て見ると。
武松はもう祭壇の前に坐っている。
兵卒に手伝わせて、豚の首を供え、二本の朱蝋燭をあかあかと灯させたり、また、紙銭や花をかざり、その間には香煙縷々と焚いて、およそ兄の武大が生前好きだった種々な供物は、なにくれとなく、所せましと壇に供えているのだった。
「まあ、二郎さんたら、ほんとに兄さん孝行ですこと。四十九日のお供え物に来て下すったの」
「いや、それとね姉さん。ちっとばかり酒肴を仕込んで来ましたから、今日は近所の衆にも、ようっくお礼を申したいと思ってさ」
「あらお礼は私がしてあるのに」
「でも、都頭の武松が、弟としているからには、黙ってもおけませんやね。そうでしょう、弟として」
「お気がすまないなら、どうにでも」
「おい従卒。大皿を出して、酒、さかな、果物、肉、ずらりと並べろ。そして貴さまたちは、ご近所の衆を、ていねいにお迎えして来い。おれは隣の王婆さんを誘って来る」
「二郎さん、隣のおばさんなら、私が行って――」
「なあに、それには及びませんよ。今日は弟が施主だ」