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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「――兄のかたきを報じたるものとはいえ、殺人の重罪はゆるしがたい。しかし、自身自首して出たかども神妙なうえに、近隣の輩、そのほかの証人、また全く縁故もなき陽穀県の一般市民よりも、あまたな助命の嘆願が、当奉行所や県城に聞えておる。よって、情状を酌み、死一等を減じて、背打ち四十となし、刺青を加え孟州二千里の外へ流罪といたすものである。……ありがたくおうけいたせ」
「はっ……」
武松が、首枷の首を下げたとたんに、その隣の荒むしろに据えられていた王婆が、身をのばして叫んだ。
「お、お奉行さん! ……わしも、うちへ戻っていいのかね。わしのことはまだ何もいわっしゃらぬが」
「だまれ。王婆は死罪申しつける」
「げっ、死、死罪だって」
わっと、婆は泣き仆れた。
「立て」
一同は退がる。
奉行も、王婆のわめき声をうしろに立つ。
翌日、王婆はふたたび、大牢からひきずり出され、木驢というものに乗せられた。馬の恰好をした台である。それに縛りつけられ、四本の五寸釘で手足を打たれ、刑場まで、引き廻されて行くのであった。
それを曳き、それにつづく獄卒たちは、罪状書きの捨て札を先頭に弔い花をかかげて行く。