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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「あいつか。そして野郎が亭主になっている飲屋の店はどこなんだ?」

「あの広場の道を斜かいに抜けた所の大通りの角店ですが」

「わかった。みんなは遠くに散らかって隠れていろ」

武松はただ一人となって、わざと男の休んでいる柳並木の前を通った。じろとこっちが横目で見流すと、蒋門神も半眼で武松を見ぬ振りで見ている風だ。

なるほど恐ろしい長身である。椅子に掛けて突ン出しているその両脚は人の二倍もありそうだ。面も馬面であり、紫ばンだ疣々だらけな皮膚に黄色いヒゲが唇の辺を巻いている。――手には蠅払いの払子、上衣も下も白麻ずくめ。何とも、底気味わるい薄眼の眼光が、武松の踵を見送ってから、また半眠りの態に返った様子である。

こっちは武松。大通りでも一番の角店で、ひと目にもわかる繁昌らしい大酒屋へ、ずっと入って、腰かける。

午なのでまだ客も少ない。武松は酒板に頬杖ついて、

「おいおい。兄ンちゃん。早く持って来ねえかよ早く」

「ほい」と若い給仕人が素ッ飛んで来て「何か、ご註文をうかがッてましたか」

「べら棒め。うかがわなくっても、飲屋へ入って来た客なら、酒にきまってら」

「あいすみません」