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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
すぐさま二角入りの碗になみなみと注いで来て「へい、お待ちどおさま」
武松は、ちょっと、鼻をやってみただけだった。
「おい。とり代えて来な、こんなもなあ、酒じゃあねえ」
「いけませんか」
給仕人は、上酒の甕から、べつなのを汲んで来て、武松の鼻っ先においた。
「ぶッ……」
と、一ト口、霧に吹いて、武松は呶鳴った。
「孟州一番の酒場だなンてえ評判は嘘ッ八だな。もういちど、取り代えて来い」
すると、奥の帳場内からこっちを睨みながら、その給仕人を呼んだ女がある。肉づきのいい雪膚の腕もあらわにむき出した羅衣軽裳の若い女将で、柘榴色の唇をキュッとゆがめ、金蛇の腕環のみえる手を頬の辺りにやって、さっきから虫を抑えていた風だった。
「ちッ、小癪だね。だがまあ、もう一ぺん代えておやりよ。それでもゴネたら、私がつまみ出してやるから」
ところが武松。三度目の酒は、ぐうっと一ト息にほして、
「すこし、いける。おい、もう一つ」
「こんどはお気にめしましたか」
「だまって持って来い。こう、すぐおあとだよ。それから、女将にここへ来て、お愛相でもしねえかといってやれ」
「そんなことあ、いえません」