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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
誰でも負けてやりさえすれば客にして、幾日でも泊めておき、酒を飲ませたり餞別をくれたりだから、つまりは浪人者のいい食いもの。おそらく、ほんとうのとこは旦那芸ぐらいな腕だろうというんだが」
「あてにはなるめえ。李吉が試してみたわけじゃあるめえし」
「うんにゃ、そんなことアべつにしても、この陳達には自信がある。生れ故郷の城では、長鎗の跳澗虎といわれたおれだ。二十歳そこそこの青二才に、おれたち少華山の三頭目が、恐れをなしているといわれるのも我慢がならねえ。まして金持ちの荘院じゃねえか。なんで指を咥えていられるものか」
陳達は豪語してやまなかった。朱武と楊春が、止めれば止めるほど、意地にもなって、
「よし、それじゃあ、おれ一人でもやってみせる。おめえたち兄弟は、酒でもくらっているがいいや」
とばかり、即刻、二百ほどの手下に、出触れを廻し、自分も戦陣へでも臨むような身支度にとりかかった。
そのいでたちを見るに、緋房のついた鉢兜、鋳物綴りの鍍金の甲、下には古物ながら蜀江の袖をちらつかせ、半月形の革靴をはいた。そして、組糸の腰帯に、刃幅の広い大剣を横たえ、山路に馴れた白馬のくらにりゅうとして乗りそびえた姿は、さすが少華山の賊将、われから豪語したほどなものはある。