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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
かくて武松は孔家にひきとめられていること一週日ほどのうち、宋江も近くこの家の客分を辞して他県へ移るつもりだという身の上を聞かせられた。
「じつはその後、故郷における私の詮議もだいぶほとぼりがさめたので、弟の宋清はいま、宋家村の家へ帰っています」
そう前提して、宋江は意中を語った。
「……で、その弟宋清からは折々の便りを手にしているわけだが、この県の清風鎮の長官で小李広花栄という人物がある。その者からぜひとも私に清風鎮へ来てくれという勧めなのです。かねて旧知の縁でもあり、余りに切なすすめなので、孔家へもわけを告げて、近日そちらへ出向くつもりでいるのだが」
「先生、よけいなことをお訊ねしますが、こちらの孔家はそれでいいんですか」
「ム。孔亮、孔明の兄弟へは、いささか剣法や兵学などをここで教授していた次第だが、この師匠が持っているものは、あらかた教えおわっている。……どうだな武松、おぬしも私と一しょに、道をかえて、その清風鎮へ行ってみないか」
「いや、よしましょう」
「なぜ」
「先生のつい犯した過失同様な女殺しの科とは違って、この武松のやった罪科は、血の池、針の山を追われる地獄のようなもんです。