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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
――もとは山東莱州で馬や羊の売り買いをしていた博労なのだ。
また、彼が片腕の小頭には。
両淮生れの荷馬車曳き上がりで、短小で素ばしッこくて、兇暴無残な王矮虎。――またもう一人は、蘇州の産で、銀細工屋の若旦那くずれの、色が生白くて背のひょろ長い鄭天寿、またの異名を白面郎ともいう男もいた。
この三人三様の風貌をもった賊の頭目は、折ふし山寨の一窟で、博奕か何かに夢中になっていたところから、子分の報らせも耳の外に、
「なに、いい獲物を捕まえたと。そこらの柱へでも引ッ縛っておけ。どうするのかは、あとでゆっくり人態を見てからでいい」
と、晩になるまで、放置しておいた。
そして、それに飽きると酒もりだったが、酒のなかばに「そうそう、子分の奴が、昼間くくッておいた肴があったはず」と、王矮虎が言い出して、宋江を眼の前へ曳かせ来てみると、これはめッたに山寨などではお目にかからない端厳な人品だ。
「ちと色は黒いが」
と、王矮虎は舌なめずりして、ほかの二人へ目くばせた。
当時、宋朝の文化は、帝室や都府の中心では、はやすばらしい発達途上を示してもいたが、未開大陸の僻地では人肉嗜食の蛮風などがなお一方にはのこっていたらしい。