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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「はて、どっちへ行ったものか?」
と、思案顔している旅人がある。
宋公明――宋江であった。
山寨の連中にはしきりに引きとめられたが、その日ついに、錦毛虎燕順以下に麓まで見送られ、袂を別って、ひとり鎮城の巷へ入って来たものだった。
街は青州清風寨の要害の地にあるので、かなりな繁華を呈し、各州へ通じる三街道の起点をなし、人家四、五千、小高いところに鎮台がある。
「あ。花長官のお住居ですか」と、道行く人は、宋江の問いに、鎮台の方を指さした。
「鎮台大路へむかって、南側の官邸が、劉文官のおうちで、もうすこし先の北側のおやしきが、武官の花栄閣下のおすまいでございますよ」
「ありがとう」
宋江はやがて、宏壮な一門の前に立ち、衛兵に刺を通じて面会を求めた。
すぐ応接へ通され、待つほどもなく、
「やあ、よくやって来られたなあ」
と、小李広花栄その人の快活な声を目のまえに聞いた。
この青年将軍は皓歯明眸で、よく贅肉を除いて筋骨にムダのない長躯は、千里を行く駿馬のごとき相があった。
金翠の綉キラやかな戦袍に、武長官の剣帯をしめた腰細く、犀の角(これを吹いて軍を指揮する)を併せて飾り、萌黄革の花靴の音かろやかに歩きよって来、