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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「空家と見えるわ。ええい面倒だ、家探しして、わが家の大切な客を助け出せ」

と命令した。

兵はなだれ込んだ。こうなれば理も非もない。狼藉乱暴はつきものである。とどのつまり、宋江を見つけて、その縛めを切って助け出し、

「やい劉家の奴ら、文句があるなら言って来い。いつでもあいさつは受けてやる」

と、鬨の声をあげつつ潮の如くひきあげて行った。

あとでは劉高、またその夫人、

「畜生、よくも辱を与えたな」

足ずりして口惜しがり、一族の手までかりて、約二百の兵をその夜、逆襲せに、花栄の官邸の門へ差向けた。

防ぐ側、押しかける側、半夜は攻防区々な揉み合いだった。劉高の寄手のうちには、武芸師範の猛者が二人もいて、これが指揮をとり、勢い旺だったからである。

「弓をかせ」

花栄は、夜明けがた、わざと正門を八文字に押し開かせ、

「劉家の雑輩めら、命がいらぬなら、そこを真っ直に入って来い」

と、手なる強弓に大鏃の矢をがッきとつがえた。

門外の寄手はさすがたじたじと後ずさッた。花栄はふたたび大音に、

「来ないな、どいつも。――ならば眼を澄まして見物しろ。そこの門の両柱に、泰瓊敬徳、二門神の絵像が貼ってあるだろう」