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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
わしと燕順とは、ひと足さきに行って、前触れをしておくから、一同はあとからやってくるがいい」
そこで、二人だけは先へ馳けたのだ。単騎の方が、道のりはずっと捗どる。
すでに別れてから三日ほど後のこと。宋江と燕順が、とある道ばたの居酒屋で馬をつなぎ、腹ごしらえをしかけていると、
「おやっ? 宋江さまじゃございませんか」
と、店の薄暗い隅ッこで独りチビチビ飲んでいた豚の鼻みたいな頭巾をかぶッた大男が、のそっと、こっちへ寄って来た。
ぎょッとしたが、こう図ボシをさされたのでは隠しようもないままに。
「いかにも、私は宋公明だが。して、おまえさんは」
「やあ、いい所でお会いしましたが、こいつは何やらどうも不思議だ。草葉の蔭の人のお引き合わせかもしれませんな」
「はて、草葉の蔭の人とは」
「ま……。とにかく、この手紙をごらんなすって」
「や。この手紙は、わしの実弟、鉄扇子宋清の筆蹟にちがいないが?」
「てまえは、石勇というケチな男で、あだ名を石将軍といわれ、元は大名府で、博奕渡世などしておりました」
「どうして、弟の宋清と、ご昵懇なのですか」
「いや、ご昵懇というほどなお近づきじゃございません。