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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

先生、先生」

「ああっ……。燕順、すまないが、後から来る同勢の人々へは、君からあやまっておいてくれ。わしはここからすぐ、郷里の家へ帰らなければならぬことになった」

「だって、あなたがお出で下さらなくなっちゃ、梁山泊だって、仲間へ入れてはくれねえでしょうに。五百人が路頭に迷うじゃございませんか」

「いやいや、いま筆紙を借りて、梁山泊へは私の名で一札を書く」

「いったい、どういうご事情なんで?」

「郷里の父が亡くなったのだ。……弟の手紙には、これを見たらすぐ帰ってくれとある。……ああ、わしは何たる不孝者か。燕順、笑ってくれ。泣かずにいられない! ……。この旅空でついに老父の死水もとれず、何一つ安心させてあげることも出来ずにしまった」

宋江は見得もなく、哭いて、哭きやまないのだった。これが宋江の素裸な人間そのものであるを思えば、もうその意志を曲げようもなく、燕順のごとき男すら、つい貰い泣きして、一も二もなくそれには同意を寄せてしまった。

花栄、秦明、黄信らの大人数は、例の大旗を押したてて二日後に三隊とも、同じ土地へさしかかって来た。

すぐ旅籠から飛び出して迎えた燕順と石勇とが、ここにいない宋江のわけを話すと、