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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
と、早口に問いつめ責めたてる。
李立は口もきけない。手をくだしたのは、ついまだ今し方のことだという。ねむらせた三個の空骸は、すぐ厨の流しに引きずり込み、すぐばらしてしまうつもりだったが、懐中物をしらべてみると、囚人にしては予想外の大金やら、江州の戴院長へ宛てた手紙などが出てきたので、なにやらすこし不気味になり、ぼやっと考えこんでいたところだと、李立は吃り吃り語った。
「ちぇッ、ありがてえ、ここへ来たのは天のおさしず。それこそ、宋公明さまにちげえねえ。念のため、端公のふところの押送文を調べてみろ! そして早く早く覚醒薬だ! 李立! もしかそれで生き甦らなかったら、てめえも生かしちゃおかねえぞ」
かくて薄暗い奥の土間では、しばしあわただしい叱咤、跫音、物音の転手古舞につれて、まもなくまた、よろこびの声がわき、宋江、端公たちの声もようやく聞えだしていた。
このへんくどい話はいるまい。土地の四人の首を揃えての謝罪に目はしら立てて憤る宋江でもない。むしろ仮死のお蔭で、冥途の世界をちょっと覗いてきたと、宋江は笑うのである。そして李立の謝罪と歓待に一夜をまかせ、翌日はすぐ掲陽鎮のふもとへと降りて行った。