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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ぜひ、宅にも一ト晩お泊りを」
と、混江龍の李俊はまた、そこでも宋江をひきとめてやまない。ついに一夜のやっかいになる。その晩の酒もりで、李俊は童威、童猛の兄弟分二人を、あらためて、宋江にひきあわせた。
商売は二人ともに揚子江をまたにかけての塩の闇屋であるとのこと。そして童威には出洞蛟のあだ名があり、童猛には翻江蜃の異名がある。ともに、大江の河童のごとく、よく水を潜り船の底にもヘバリついて長時間といえ怯まない。そんな自慢ばなしを聞いたりして、宋江は旅の憂さもつい忘れた。
また、こんなたびごとには、主人から端公二人へ、たっぷり心づけが渡るのは、礼儀みたいなものだった。端公の李万、張千はほくほくだった。そしてここを別れて立ち、午ごろには久しぶり人烟にぎやかな古色の街へ入っていた。
「さあっ、お立会い!」
とある辻の人群れの中だった。こう高々とシャ嗄れた声をしぼっている香具師がある。
見れば、竿のような痩躯、ひょろ長い男。朽葉色の田螺頭巾をかぶり、それより色の黒い頬のコケに、長いもみ上げをばさらと散らし、虱もいそうな破れ袍をおかしげに着て、皮帯皮靴、大股ひらいて、拳を天に振っている。