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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

宋江が彼にむかって、なんで階下で暴れていたのかと訊ねると、金を貸せ、貸さない争いだったと飾りもなくいう。――で、宋江がなんの気なしに銀十両をとり出して、

「これで足りるんですか。よかったらおつかい下さい」

といってやると、李逵は雀踊りして、

「てへッ、ほんとに貸してくださるか。ありがてえ、これで目が出たら、倍にして返すぜ。おごってやるよ」

ふところに入れるやいな、あっというまに、もうそこにいなくなっていた。

「宋君」と、戴宗はあとで眉をひそめ「あれには、お貸し下さらんほうがよかったですな」

「なぜですか」

「無類に気のいい正直な奴ですが、なにしてもかねを見たらすぐ博奕場です。いずれ返すには返しましょうがね」

「ま、いいじゃありませんか」

「役には立つ男だが、牢城の困り者です。弱い囚人は可愛がってやるが、上役に毒づくし、仲間の牢番なども、威張る奴へは、こッぴどくたてをつく。なんともはや文字どおりな黒旋風なので」

「そろそろ、戻りましょうか。……城外の川景色でも見ながら」

「む、では江州風物など、ご案内しようか」

ここはさておき、一方の李逵は、もう賭場の盆ござで眼のいろをかえていた。