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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ま。かんべんしてやってくれ。わしは牢城営にいる者だが薬代でも上げるから、わしと一しょについておいで」

と、李逵に代って深くあやまり、たって芸人の男親ひとりを連れて帰った。それやこれやで、せっかくな琵琶亭の歓も、帰りは味気ない夜道になった。――けれど、琵琶弾き娘の宋という男親は宋江から思いがけない慰藉料の銀子をもらい、涙をながして、その晩、彼の部屋からもどって行った。

壁は宋江の筆禍を呼び、飛馬は「神行法」の宙を行くこと

元来、宋江も酒はつよい。ただ挙止やことばが静かなだけで、酒量は誰にも負けはとらない。

“玉壺春”やら金鱗の鯉やらで、ゆうべもあれで、したたかに飲み、そして食べてもいたのだろう。……そのせいか明け方から彼はシクシク腹痛を覚えていた。朝陽を見てからはいよいよ烈しく、厠へ通うこと何十回であった。

土産の金鯉は、すべて牢城の差撥や仲間へ分けてやった。囚徒はみな交り番こに彼の部屋へ来て親切に世話してくれる。下痢止めの六和湯を煎じるやら粥を煮るやらで、同囚のたれ一人、宋江の日頃の徳を、ここで報わない者はない。

李逵、張順も見舞に来た。とかくして宋江は、十日余りも寝こんでしまった。