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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
軍師呉用にも千慮の一失。 探し出す偽筆の名人と印刻師のこと
水は渺々、芦は蕭々――。梁山泊の金沙灘には、ちょっと見では分らないが、常時、水鳥の浮巣のように“隠し船”がひそめてある。そして居酒屋の朱貴が射るかぶら矢を合図に、事あれば、わっと陸へ上がってくる仕掛けになっている。
戴宗といえど、これを見ては、争いも無用と知った。道を曲げて、梁山泊へ立ち寄り、事のわけを自身語るしかないと腹をきめ、
「かたきでも敵でもないのに、おまえさん方と喧嘩はつまらん。さあ案内してくれ」
と、朱貴に身をまかせて船へ移った。もちろん彼がここまで乗って来た“神行法”の神馬、都へとどける金銀の進物籠も、あわせて鄭重に船へ積まれる。
「ひと足、お先に」
と朱貴は先頭の水案内舟で急いだ。それが対岸へつくや否、彼は聚議庁(山寨の本丸)まですッ飛んで行き、軍師呉用にわけをはなした。呉用はまたすぐ、首領の晁蓋にこれをつたえ、全山の賊将をよびあつめた。
だから戴宗がそこへ臨んだときは、あらまし、戴宗の開封行きの使命、また、江州牢城の獄にあって、いまや死を待つばかりな運命に落ちている宋公明の危機なども、すでに一同知っていた様子であった。
とはいえ、呉用と戴宗とは、じつに久しぶりな邂逅でもある。