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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「では、軍師に何ぞ妙計がありますか」

「おう無くもない。……まず第一に、戴院長は都へ行ったことにして、蔡大臣の偽手紙を持ち帰り、蔡九を巧くあざむくことだ」

「そして?」

「蔡大臣への偽手紙にはこう書いておく。――犯人宋江なる者は、世上の童の謡言に照らしてみても、ゆゆしき国罪の張本なれば、軽々しく地方において処刑するな。途中厳重に、都へ差立てい、という偽命令で江州から外へ誘い出す」

「なるほど、その途中を待ち伏せてか。――けれど軍師、大臣蔡京の筆蹟はどうしますか。息子の蔡九が見れば、おやじの筆蹟だ、すぐ見破ッてしまいましょうが」

「案じるには及ばん。近ごろ天下に流行ッている四家の書体といえば、蘇東坡、黄魯直、米元章、蔡京の四人で、これを宋朝の四大家といっている」

「蔡京は書ではそんなに偉いのかなあ」

「まあ聞け。……ところで、わしが以前、済州の城内で少しばかり世話してやった書生がある。その蕭譲という者じつに偽筆の名人なのだ。どんな碑文だろうが軸物だろうが、ひと目見たら忘れない。四大家の書体などもそっくり書く。人呼んで、“聖手書生”とあだ名しているくらいだし、しかも刀槍を持たせれば、これまた相当に使うといったような男だ」