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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

てまえは岳廟の戴法印という者でございますが」

「なんだい午飯どきに。また岳廟のお札売りか。行ってくれ、行ってくれ」

「いえ、建碑のお願いごとで」

と、戴宗はまず銀子五十両をさきに出して、鄭重に、碑文の揮毫を依頼した。

「ほ。お急ぎかね」

「じつは建碑の日取りまで予定されておりますので、即日、山へお越しねがって、文案、ご執筆、併せて願い申したいというのが、一山の希望でございまする」

「じゃあ、さっそく旅立ちていうわけじゃねえか。したが法印さん、石はあっても、文は間に合っても、彫りはどうしなさるんで?」

「ご当所には、金石印刻の上手、金大堅と仰っしゃる人もおいでのよしで、これからそちらへ交渉に廻るつもりでございますが」

「大堅なら友達だから、仕事もしいいな。おっと、待ちなせえ。一しょに行ってやるから」

蕭譲はもう大乗り気なのである。

泥窯の火も、家の留守も、裏の婆さんへ声をかけて頼んでおき、すぐ連れ立って表へ出た。

そして町中の孔子さまの社まで来ると、汚い細路次の蔭から、一見居職とわかる猫背の男がヒョコヒョコ出て来て、出会いがしらに、

「おお蕭譲じゃねえか。どこへ行くんだい」