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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
いつもこうした大祭は三日つづく。あくる日は山寨中の手下から、何十という裏山の家族小屋にも、それぞれな祭り振舞が見られるのだった。
子供もいる、老爺もいる、孫もいる、媼もみえる。彼らは山畑をたがやして、世情何たるかも知らず、いとも小さな平和の陽なたを楽しんでいる様だった。
宋江はそうした風景をながめると、また卒然と、あれきり絶えている家郷の老父を思い出して、つい涙をたれた。
で、その夜のこと、一同のいる席で、
「ここへ助けられて来て、早々にまた、わがままを申すようですが、どうしても自分はもいちど、世間へ行って来なければなりません。その数日の暇を、諸兄におゆるしいただきたいが」
と、申し出た。
「ほ。世間へ行くと仰っしゃるが、どこへ何の御用にですかえ?」
「じつは家にのこしてある老父が甚だ気づかわれますので」
「はははは。また先生が始まった」
と、大勢の仲間は大いに笑った。そして宋江の今にも何か熱いものをこぼしそうにしている瞼を見ると、同情は同情とよく分りながらも、笑わざるをえなかった。
玄女廟の天上一夢に、宋江、
下界の使命を宿星の身に悟ること
宋江の親思いは人並みはずれたものである。