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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
」
と、申し出た。
「どこだ? その部屋は」と、李雲は先に立って、奥へすすみ、兵を指揮して、床下穴へ喚きかからせ、まだ酔の醒め果てていない黒旋風李逵の体を、高手小手にふん縛らせた。そして、生ける大虎を搦めるような大騒動の下に、やっと外まで曳きずり出した。
すでに夜は白みかけており、村中はまたぞろ、昨日にまさる噪ぎである。そんな中を、李雲の捕手隊は、縄付きの李逵と証人の曹旦那、名主、草簪の女などを引っ立てて、意気揚々、沂嶺越えの向うにある県城の町へひきあげて行った。
一方、この噂は狭い田舎町のことなので、たちまち一般にひろがっていた。わけて西門外で流行っている朱富の飲屋にこれが聞えていないはずはない。前夜もう、客の口からこの事を知った朱富は、奥に隠れている兄の朱貴に諮って「どうしたものか?」と、まったく顔色も失っていた。
「弟、なんとも、おめえには、飛んだ飛ばッちりを食わせたが」と、朱貴も今となっては慰めることばもなく、
「こうなっちゃ、気のどくだが、ここの店をたたんで、女房子ぐるみ、おめえも梁山泊へ行って、暮らして貰うほかあるめえ。やがてここへも江州奉行所の差紙が来るにきまってるし」