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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
裴宣は、自嘲をふくんで、多くは語らない。
けれどそれがなお床しかった。すでに戴宗は連れの楊林からも聞いていた。――剣を持たせれば双手に二刀を使う達人であり、孔目の職に在った日は、曲事ぎらいの生一本で、どれほどこの人の公事扱いに救われた者があったかわからない、と。
これは人物だ!
戴宗は惚れこんで、切に、梁山泊への入党をすすめた。周囲八百里、宛子城、蓼児を中央に、それを繞る軍船、充つる兵馬、天下四方の奇材は、いまやそこに集まっていることなどを熱心にはなして誘った。
すると、裴宣は、
「いや、よく知っています。四百余州にかくれもない梁山泊のことですからな。じつをいえば、いつかこんな機縁はないかと待っていたところなんで。……烏滸な言いぶんですが、この山寨にも兵三百、財物十車、そのほか武器馬匹もかなりある。それを土産に、ぜひお仲間入りをえたいものと存じます。よろしく一つおとりなしを」
と、どこまでも謙虚であった。
戴宗はよろこんだ。そしてさて。
「これを聞けば、梁山泊の一統も、錦上さらに花を添えるものと、双手をあげて迎えるでしょう。……がいまは公孫先生をさがす旅の途中、その役目を果たしてから、帰途、もいちどここへ立寄って、ともに山東へお連れしたいと思うが、どうでしょうか」