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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
何をぶるぶる慄えているのか。わが輩がここで見送ってやる。かまわんかまわん、旅へ急げ」
――あと振り返り振り返り、朝霧の中を、渭州の場末から立ち退いていく父娘の姿へ、魯達もちょっと大きな手を振って見せた。そして彼自身はまた、やがて場末の辻から繁華な大通りのほうへ鈍々として歩きだしていた。
「おうっ、大将。いつも繁昌だな。肉の上等なとこを、十斤、賽の目に切ってくれんか」
状元橋の橋だもと。精肉卸売小売と見える大きな店のうちへ、ずっと入っていった魯達は、そこの椅子の一つへ、でんと腰をおろした。そして十人からの店員が立ち働いている肉切り台だの、その後ろに吊ってある沢山な丸裸の豚だの、またそれとよく似ている主人の鄭が何か筆を持って屈みこんでいた帳場の辺までを、ジロと大きな眼で睨めまわした。
「ようっ、これは提轄さまで」と、鄭は彼と見たので如才なく帳場を離れ――「おめずらしいじゃござんせんか。直々の御用なんてえのは」
「ベチャクチャいってくれんでもいい。今日はわが輩の主君、経略使(※(「禾+中」、第4水準2-82-82)は名、経略は外夷防寨の城主)の若殿のおやしきでご招待があるんだ。