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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「すまんね。あとかたづけまで君にまかせ切りで。何しろあれは余り丈夫な体質でない方だからな。気だてはいい女なんだが、心でわびながら寝たんだろ。かんべんしてくれ」

わが女房である。恋女房でもある。義弟の石秀へも悪くは見せたくないのであろう。楊雄は女房に代って言いながら、二階の階段をのぼって行った。……ああ、何だッてまた、あんな気のいい男が選りに選った女をお持ちなすったのかと、石秀は階段の下からその後ろ姿を見上げて、ふと義憤の眦を熱くした。

秘戯の壁絵もなお足らず、色坊主が百夜通いの事

路次の角店――一度は閉めた例の肉屋をまた開業して――石秀はもうくだらないムシャクシャなどは、努めて忘れようとするものか、今日は早くから店頭に顔を見せ、客へもお世辞をふり撒いていた。

すると、午すこし前のこと。

路次の奥から美しい女轎がぞろと出て来た。お供は小婢の迎児と、舅の潘爺さんとで、二人とも清々した外出姿、常ではない。

「おや、おじいさん、どちらへ?」

「石秀さん、留守を頼むよ。今日はの、それ……わしの死んだ家内の血盆経の願解きでな」

「へえ。報恩寺へですかい」

「先だってのご法要の晩、お住持の海闍梨さまと、むすめの巧雲がお約束をしたとやらで、聟どのの楊雄も、そんなことなら行って来いと、機嫌よくゆるしてくれたというわけじゃ。