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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

と奉行所では観たのである。

奉行は処置に窮した。巧雲が、楊雄の恋女房とは日頃の私交上でわかっている。彼に同情せずにいられない。かたがた、頭陀の白状でも、如海の悪行はあきらかなので、これは極小に内輪扱いとしておくに限ると考えた。で、報恩寺内の全坊主の呼び出しや犯人捜査の令は、型どおり行ったが、楊雄には、一片の証言を取っただけで、おかまいなしとなった。

巧雲は、ぞーっとしたろう。潘の爺さんも、きもを冷やしたにちがいない。だが、娘のことである。爺さんも、ぷつんと、口を閉じて、以後これについては、何も世間へ語らない。

けれど、世間には目がある、口がある。

妙な俗謡が、薊州の町では流行りだしてきた。

羅傘 さんさん 銅鑼 どんどん

肩で風切る病関索(楊雄のアダ名)も

惚れた女房は 斬りよもないよ

惚れた弱味じゃぜひもない

和尚ヌクヌク 頭陀ポカポカ

如法闇夜の 玉門じゃもの

いちど潜れば 忘られないよ

泳ぐ血の池 ぜひもない

町の酒場の妓も唄う。辻でも子供が唄って囃す。楊雄の耳に入らぬはずはない。楊雄は囃されている自分をあわれむとともに、以来影を消し去った義の弟石秀を思い詫び、