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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「あながちには申せません。鼓上蚤といえ、やはり一個の人命ですから。……それに捕まッた原因は“時報ノ鶏”をムシリ食ったつまらん悪戯にすぎませんが、これを捕えた祝家荘では、梁山泊の廻し者として、声を大に、われわれを誹謗しているとのことです」
「副統――」と、晁蓋はつねに一目おいて敬愛している宋江のことなので唇もとに微笑をみせながら「いつになく、このことでは、さいぜんから、ご熱心なお顔色ですな。どうしてですか、こんな小事件に」
「いや、事は小さきに似ていますが、なかなかこれは将来の大事を孕んでいる問題です。――なぜならば、祝氏ノ三傑をはじめ、かの独龍山三荘の勢力というものは、こことの距離、地勢、その他いろいろな条件からみて、どうしても行くすえ、わが梁山泊と、雌雄を決せねばならぬ運命をもっておりますよ」
「む、む」
と、かたわらに居並んでいる呉用、戴宗、秦明、林冲、みな大きくうなずいた。
「のみならずです。……祝朝奉は、その身、土豪の長として、領下の民百姓の汗をしぼり取り、財を富庫に充たして贅に倦んでいますが、なおその欲望の底では官職の栄位を求めています。……折あらば、官軍を手引きして、梁山泊を攻めつぶし、それを手柄に官へ媚びんとしているもの。