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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ここ独龍岡の城門の大手には、巨大な青石に、一篇の頌が刻んである。
森々の剣
密々の戟
柳花 水を斬り
草葉 征矢を成す
濠を繞る垣は是れ壮士
祖殿には在り 三傑の子
当主の朝奉 智謀に富み
事しあらば 満城吠ゆ
独龍山上 独龍岡下
窺う外賊は仮にもゆるさず
一触 霏々の虫と化し飛ばさん
「おや、まだ何か、そこの杭に?」
宋江が近よって見ると、それには新しい墨気で、こう詩句めいた文字が読まれた。
“水泊ヲ填メ平ゲテ晁蓋ヲ生擒リ”
“梁山ヲ踏破シテ宋江ヲ捉エン”
馬麟、王矮虎らは、これを見るなり怒髪をさかだてて。
「うぬ、小癪な唄い文句。ようし、ここを踏みつぶさぬうちは、梁山泊へはひきあげぬぞ」
しかし、宋江は冷静だった。
三軍のうち、第二隊だけを、ここの前門にのこして、自身の本隊と第三隊は、道を潜行して、搦手の裏門へかかった。
ところが、はしなくも今、敵側からも搦手の坂を、馳け下りてきた一勢がある。――それぞ大手の寄手の背後を突くべく、兵五百ほどをひきつれて裏門を出た扈家荘の秘蔵むすめ、あだ名を一丈青という女将軍であったのだ。
宋江は、見るやすぐ、左右へ言った。
「オオ、あれなん噂の扈三娘にちがいない。