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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
入牢ですって?」
「はあ。じつはこんなわけがらでしてね」と、鉄叫子の楽和は、そのいきさつと、密かに、自分が二人から頼まれて来た仔細を告げ、「……なにしろ、上は奉行から下は牢預かりにまで、毛家の袖の下がとどいていますからヘタをするとここ数日中には一服盛られてしまうかもしれません」
「ま! ……。どうしたらいいんだろう」
おばさんはサッと顔色まで失った。毛の薄い描き眉、かなつぼ眼。しょせん美人の内ではない。それをご当人は承知か否か。大きな頬の黒子一ツ残してそのほかは真ッ白けに塗りたくり、半裸同様なあらわな腕には金無垢の腕環デカデカ。髪にも色気狂いのような釵子やら簪やら挿して、亭主はおろか、股旅でも、呑み助の暴れン坊でも、まちがえばちょいと抓んで抛り出すなどお茶の子だといわれているこのおばさんにしてさえ、しんそこは、やはり女であったらしい。大粒の涙をこぼして早やオロオロの容子だった。
やがて、店のすみにいた若いのへ。
「何さ! 何でポカンと口を開いて人の顔を見てるんだよ! はやくどこか探して良人を連れておいで。急な話があるんだからといって」
幾人もの若いのがすぐ表へ飛び出して行く。