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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
趙の長者はふと気づいて、また隣の袂をそッと引っ張って注意をあたえた。
「合掌です……合掌作礼しなければいけませんよ。あなたのために、いよいよ上人さまが、お剃刀の式をとるのですから」
「あ、そうなんで?」
魯達も慌てて掌を合せる。――見れば長老の上人は、払子を払って、やおら禅椅に倚った様子。大香炉は薫々たる龍煙を吐き、この日長者が供えたお香料の銀子、織物、その他の目録にまずうやうやしく敬礼をほどこす。そこで咳一声、魯達が発心による出家得度の願文を高々と読む。
……終ると、香煙の渦の中にある上人の顔は、そのままいつのまにやら定に入ったすがただった。膝に印を結び、趺坐瞑目することしばらく、やがてのこと、何かが憑り移ったようにこういった。
「――善哉、善哉。この漢はこれ、天の一星につらなる宿性。元の心は剛にして直なり。粗暴乱行はしばし軌道を得ざるがためのみ。ゆくゆくは悟りに会って、非凡の往生、必ずや待つあらん。……喝ッ」
とたんに、法鼓がとどろき、再びの梵鐘が鳴ると、二人の稚子僧が進んできて、魯達のかぶっている帽子をとらせ、彼の手をとって上人の法座の下へ、ひざまずかせた。