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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
役僧の維那が、お剃刀を持って立つ。侍者は耳盥を捧げ、都寺は櫛をとって、魯達の髪の毛を九筋に梳いて束ね分ける。……剃刀はジャリジャリと、彼の横びんから頂天の方へお月さまでも描くように剃り上げてゆく。
「……?」
魯達はへんな気持ちである。自分の容貌がどんな珍しいものに変ったろうかと気味わるかった。が、頭が急に寒々と剃り終って、その剃刀が髯のところへくると、彼は慌てた。
「あ。待ってくれい。ここらは、ちッとぐらい残しといておくんなさいよ」
衆僧は、どっと笑う。――それを鎮めるように、法座の智真上人が、大喝で偈をとなえた。
「――寸草留メズ、六根清浄ナリ。汝ノタメ剃ッテ除キ、争競ヲ免ガレ得セシム。……咄ツ、ミナ剃リ落セ」
魯達はもうベソもかけない。ここで首座は、長者に代って九花の度牒を法座にささげ、新発意魯達のために、願わくば“法名”を与えたまえと請う。
上人は、おごそかにまた、次の一偈をくだして、度牒を書記にわたし、書記は筆を取って「法名」をそれに書きこむ。偈にいわく。
霊光一点 価値千金
仏法広大 賜名智深
すなわち、新発意の僧名は“智深”と名づけられたのだ。