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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

……うれしい。どうか、和子のお身をわが良人のもとへ、つつがなく届けて下さい」

「もとよりのこと。いざ、あなた様にも」

「いいえ! ……」

彼女は、強くかぶりを振った。そして阿斗の体を、趙雲の手へあずけると、急に、張りつめていた気もゆるんだか、がくとうつぶして、

「この痛手、この痛手。……たとえふたたび良人のもとへ還っても、もう妾の生命はおぼつかない。もし妾のために、将軍の馬を取ったら、将軍は和子を抱いて、敵の中を、徒歩で行かねばならないでしょう。……もうわが身などにかまわず、少しも早く和子のお身をこの重囲の外へ扶け出して下さい。それが頼みです。臨終の際のおねがいです」

「ええ! お気の弱い! たとえ馬はなくとも、趙雲がお護りして行くからには」

「オオ……喊の声がする。敵が近づいて来るらしい。趙雲、何でそなたは、大事な若君を預りながら、なお迷っているか。早くここを去ってたも。……妾などは見捨てて」

「どうして、あなた様おひとりを、ここに残して立去れましょう。さ、その馬の背へ」

駒の口輪を取って引き寄せると、糜夫人は突如身をひるがえして、傍らの古井戸の縁へ臨みながら、