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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

四

病を重らすだけのことだ。さすれば孝道にも背くことに相成ろう。不孝をするため、わざわざ来られたわけでもあるまい!」

劉※(「王+奇」、第3水準1-88-6)はややしばらく門外にたたずんで哭き声をしのばせていたが、やがてしおしおと馬をかえして立ち去った。

秋八月の戊申の日、劉表は、ついに臨終した。

蔡夫人、蔡瑁、張允などは、偽の遺言書を作って、

=荊州の統は、弟劉を以て継がすべし

と披瀝した。

蔡夫人の生んだ二男劉※(「王+宗」、第3水準1-88-11)は、その時まだ十四歳であったが、非常に聡明な質だったので、宿将幕官のいるところで、或る折、

「亡父君のご遺言とはあるが、江夏には兄上がいるし、新野には外戚の叔父劉玄徳がいる。もし兄や叔父がお怒りの兵を挙げて、罪を問うてきたら何とするぞ」

と、質問しだしたので、蔡夫人も蔡瑁も、顔いろを変えてあわてた。

四

すると、末席にいた幕官の李珪という者が、劉の言へ即座にこたえて、

「おう若君、よくぞ仰せられました。実に天真爛漫、いまの君のおことばこそ、人間の善性というものです。君臣に道あり、兄弟に順あり、お兄君をしのいでお継ぎになるなど、もとより逆の甚だしいものです。