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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

三

……周都督、火攻めはどうじゃ、火術の計は」

「しっッ」と周瑜は、老将の激しこむ声音を制して、

「おしずかに、ご老台。あなたは一体、誰からそんなことを教えられましたか」

「誰から? ……馬鹿をいわっしゃい。わしの本心から出た信念じゃ」

「ああ、ではやはり、ご老台の工夫とも一致したか。――ではお打明けするが、実は、降人の蔡仲、蔡和の両名は、詐って呉へ投じてきたが、それを承知で、味方のうちに留めてあります。敵の謀略の裏をかいて、こちらの謀略を行わんためにです」

「ふむ。それは妙だ。してその降人を、都督には、どう用いて、曹操の裏をかくおつもりか? ……」

三

「その奇策を行うには、呉からも曹操の陣へ、詐りの降人を送りこむ必要がある。……が、恨むらくは、その人がありません。適当な人がない」

周瑜が嘆息をもらすと、

「なぜ、ないといわるるか」

黄蓋は、せき込むように、身をすすめて、詰問った。

「呉国、建って以来、ここ三代。それしきのお役に立つ人もないとは、周都督のお眼がほそい。――ここに、不肖ながら、黄蓋もおるつもりでござるに」

「えっ。……ではご老台が、進んでその難におもむいて下さるとか」