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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

二

家父とも頼む叔父に死なれ、主と仰ぐ人には忌まれ疑われ、寄るに陣地なく、遂に江北を脱してこれへ参りましたもの。――願わくはそれがし両名の寸命を用いて、良き死場所をお与えください」

周瑜は、即座に、

「よろしい。誓って、呉のために尽す気ならば、今日以後、わが陣中に留まるがいい」

と、これを甘寧の配下に附属させた。

ふたりは、心中に、

(仕済ましたり)

と、舌を吐きながらも、表面はいと悄々と、恩を謝して退出した。

魯粛は、そのあとで、

「都督、大丈夫ですか」と、疑わしげに、彼の心事を確かめた。

周瑜は、得々として

「さしも忠臣といわれた蔡瑁なのに、罪もなく殺されては、彼の親身たるもの、恨むまいとしても、恨まずにはおられまい。曹操を離れて、われに来たのは、けだし、南風が吹けば南岸へ水禽が寄ってくるのと同じ理である。何を疑う余地があろう」と笑うのみで、省みる風もなかった。

魯粛は、その日、例の船中で孔明に会ったので、周瑜の軽忽な処置を、嘆息して語った。

すると、孔明もまた、にやにや笑ってばかりいる。何故、笑い給うかと、魯粛がなじると、

「余りに要らぬご心配をしておられるゆえ、つい笑いがこぼれたのです」