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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

四

「国の功臣、それに年も年、なにとぞ憐みを垂れたまえ」と、哀願した。

周瑜はなお肩で大息をついていたが、

「人々がそれほどまでに申すなれば、一時、命はあずけておく。しかし軍の大法は正さずにはおけん。百杖の刑を加えて、陣中に謹慎を申しつける」と、云い放った。

即ち、獄卒に命じて杖百打を加えることになった。黄蓋はたちまち衣裳甲冑をはぎとられ、仮借もなく、棍棒を振りあげてのぞむ獄卒の眼の下に、無残、老い細った肉体を、しかも衆人監視の中に曝された。

四

「打て、打てっ、仮借いたすなっ。ためらう奴は同罪に処すぞ!」

怒りにふるえ、猛りに猛って、周瑜の耳は、詫び入る諸将のことばなど、まるで受けつけなかった。

「一打! 二打 三打!」

杖を持った獄卒は、黄蓋の左右から、打ちすえた。黄蓋は地にうッ伏して、五つ六つまでは、歯をくいしばっていたが、たちまち、悲鳴をあげて跳び上がった。

そこをまた、

「十っ……。十一っ……」

杖は唸って、この老将を打ちつづけた。血はながれて白髯に染み、肉はやぶれて骨髄も挫けたろうと思われた。

「九十っ。九十一っ……」

百近くなった時は、打ちすえる獄卒のほうも、へとへとに疲れていた。