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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

四

そして、

「賈華かもしれません」と、云いのがれた。

賈華は、母公の前に立たせられた。彼は、知らないといわなかったが、また、自分の所為であるともいわなかった。ただ黙然と首を垂れていた。母公の怒りは極度にたかぶった。

「喬老。武士たちに命じて、賈華を斬りすてておしまいなさい。わが佳婿がねの見ていらっしゃる前で」と、罵った。

玄徳はあわてて命乞いをした。ここに血を見ては慶事の不吉と止めた。孫権は直ちに賈華を追い出した。喬国老は廻廊の外や縁の下の者どもを叱りとばした。鼠のように頭をかかえてそこから大勢の兵が逃げ散って行った。

かくて酒宴は夜に及び、玄徳は大酔して外へ出た。ふと庭前を見ると、そこに巨きな岩がある。玄徳はじっと見ていたが、何思ったか、天に祈念をこらし、剣を抜いて振りかぶった。

「……?」

孫権は木蔭から見ていた。

四

終日、歓宴の中に酔っても、玄徳の胸には、前途の茫々たる悩みがあった。彼はふと、人なき庭園へ出て、酔を醒まさんとしながら、発作的に、天を仰いでから祈念したのであった。

「わが覇業成らぬものなら、この岩は斬れじ、わが生涯の大望、成るものならば、この岩斬れよ!」