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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

三

この時、呉主孫権も、隣境の変に万一あるをおそれて、柴桑城(廬山、陽湖の東南方)まで来ていたが、事態いよいよただならぬ形勢となったので、

「今こそ、呉の態度を迫られる時が来た。曹操についたが得策か、玄徳と結んだがよいか。ここの大方針は呉の興亡を決するものだ。乞う、そちの信じるところを忌憚なく聞かしてくれい」

呉の大賢といわるる魯粛は、孫権から直々にこう問われた。

三

魯粛は慎重に、孫権の諮問にこたえた。

「劉表の喪を弔うという名目をもって、私が荊州へお使いに立ちましょう」

「……そして?」

「帰途ひそかに江夏へおもむき、玄徳と対面して、よく利害を説き、彼に援助を与える密約をむすんで来ます」

「玄徳を援助したら、曹操は怒って、いよいよ鋭鋒を呉へ向けてくるだろう」

「いや、ちがいます。玄徳の勢いが衰退したので、曹操はたちまち呉へ大軍を転じて来たものです。故に、玄徳が強力となれば、背後の憂いがありますから、曹操は決して、思い切った侵攻を呉へ試みることはできません」

魯粛は、なお説いて、

「私がお使いに立てば、それらの大策の決定は後日に譲るまでも、とにかく荊州から江夏にわたる曹操、玄徳、両方の実状をしかとこの眼で見てくるつもりです。