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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

三

三

この戦では、初め江上の船合戦で、呉軍のほうが、絶対的な優勢を示していたが、将士共に、

「黄祖の首は、もう掌のうちのもの」

と、あまりに敵を見くびりすぎた結果、陸戦に移ってから、大敗を招いてしまった。

もっとも大きな傷手は、孫権の大将凌操という剛勇な将軍が、深入りして、敵の包囲に遭い、黄祖の麾下甘寧の矢にあたって戦死したことだった。

ために、士気は沮喪し、呉軍は潰走を余儀なくされたが、この時、ひとり呉国の武士のために、万丈の気を吐いた若者があった。

それは将軍凌操の子凌統で、まだ十五歳の年少だったが、父が、乱軍の中に射たおされたと聞くや、ただ一名、敵中へ取って返し、父の屍をたずねて馳せ返ってきた。

孫権は、いち早く、

「この軍は不利」と、見たので、思いきりよく本国へ引揚げてしまったが、弱冠凌統の名は、一躍味方のうちに知れ渡ったので、

「まるで、凌統を有名にするために、戦いに行ったようなものだ」と、時の人々はいった。

翌九年の冬。

孫権の弟、孫翊は、丹陽の太守となって、任地へ赴いた。

なにしろ、まだ若い上に、孫翊の性格は、短気で激越だった。おまけに非常な大酒家で、平常、何か気に入らないことがあると、部下の役人であろうと士卒であろうと、すぐ面罵して鞭打つ癖があった。