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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

二

と、あわてたものとみえ、旗を取って面を包み、無二、無三、鞭を打った。

「首を包んだものが曹操だぞ」

また、四方で声がする。曹操はいよいよ魂をとばして林間へ駈けこんだ。すると誰か、槍を伸ばして突いた者がある。運よく槍は樹木の肌を突いて、容易に抜けない。曹操はその間髪にからくも遠く逃げのびた。

二

「きょうの乱軍に、絶えず予の後ろを守って、よく馬超の追撃を喰い止めていたのは誰だ」

曹操は、味方の内へ帰ると、すぐこう訊ねた。

夏侯淵が答えて

「曹洪です」

というと、曹操はさもありなんという顔して、うれし気に、

「そうか。たぶん彼だろうとは思ったが……。先日の罪は、今日の功をもって宥しおくぞ」

やがてその曹洪は夏侯淵に伴われて恩を謝しに出た。曹操は、今日の危急を思い出して、幾度か死を覚悟したことなど語りだし、

「自分も幾度となく、戦場にのぞみ、また惨敗をこうむったこともあるが、およそ今日のような烈しい戦いに出合ったことはない。馬超という者は敵ながら存外見上げたものだ。決して汝らも軽んじてはならぬ」と戒めた。

敗軍をひきまとめた曹操は、河を隔てて岸一帯に逆茂木を結いまわし、高札を立てて、