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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

五

――しかし劉予州は如何に。これは自称して、中山靖王の末裔とはいい給えど、聞説、その生い立ちは、蓆を織り履を商うていた賤夫という。――これを較ぶるに、いずれを珠とし、いずれを瓦とするや。おのずから明白ではあるまいか」

孔明は、呵々大笑して、

「オオ君はその以前袁術の席上において、橘をふところに入れたという陸郎であるな。まず安坐してわが論を聞け。むかし周の文王は、天下の三分の二を領しながらも、なお殷に仕えていたので、孔子も周の徳を至徳だとたたえられた。これあくまで君を冒さず、臣は臣たるの道である。――後、殷の紂王、悪虐のかぎりを尽し、ついに武王立って、これを伐つも、なお伯夷、叔斉は馬をひかえて諫めておる。見ずや、曹操のごときは、累代の君家に、何の勲だになく、しかも常に帝を害し奉らん機会ばかりうかがっていることを。家門高ければ高きほど、その罪は深大ではないか。見ずやなおわが君家劉予州を。大漢四百年、その間の治乱には、必然、多くの門葉ご支族も、僻地に流寓し、あえなく農田に血液をかくし給うこと、何の歴史の恥であろう。時来って草莽のうちより現われ、泥土去って珠金の質を世に挙げられ給うこと、また当然の帰趨のみ。