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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页
――いまわが呉は、孫将軍が、父兄の業をうけて、ここに三代、地は六郡の衆を兼ね、兵は精にし、粮は豊山を鋳て銅となし、海を煮て塩となす。民乱を思わず、武士は勁勇、むかうところ敵なしです」
「…………」
彼の演舌を聞くのは初めての人々もあったらしく、多くは、その爽やかな弁と明白な理論に、意外な面持を見せていた。
「……しかるに、何を恐れて、いま曹操の下風に媚びる必要がありましょう。質子を送るは、属領を承認するも同じです。招かれれば、呉将軍たりと、いつでも都へ上らねばならぬ、然るときは、相府に身をかがめ、位階は一侯を出ず、車数乗、馬幾匹定め以上の儀装もできません。いわんや、南面して、天下の覇業を行わんなど、思いもよらぬ夢でしょう。――まずここは、あくまで、無言をまもり質子も送らず、曹操のうごきを見ている秋ではないでしょうか。曹操が真に漢朝の忠臣たる正義を示して天下に臨むなら、その時初めて、国交を開いても遅くはありません。またもし、曹操が暴逆をあらわし、朝廷に忠なる宰相でないようなら、その時こそ、呉は天の時を計って、大いに為すある大理想をもたねばなりますまい」