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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

ここで孔明は軽く笑った。

ぽいと、かわされたかたちである。孫権は気がついたもののごとく、急に慇懃の辞をかさねて、

「――実は、魯粛が先生の徳操をたたえること非常なもので、予もまた、久しくご高名を慕うていたところなので、ぜひ今日は、金玉の名論に接したいと考えていたのです。願わくば、この大事に当ってとるべき呉の大方向をご垂示にあずかりたい」

「愚存を申しあげてもよいと思いますが、しかしおそらく将軍のお心にはかないますまい。お用いなき他説をお聴きになっても、かえって迷う因ではありませんか」

「ともあれ拝聴しましょう」

「では忌憚なく申しあげる。――四海大いに乱るるの時、家祖、東呉を興したまい、いまや孫家の隆昌は、曠世の偉観といっても過言ではありません。一方、わが劉予州の君におかれても、草莽より身を起し、義を唱え、民を救い、上江遠からず曹操の大軍と天下をあらそっています。これまた史上未曾有の壮挙にあらずして何でしょう。然るに、恨むらくは、兵少なく、地利あらず、いま一陣にやぶれて、臣孔明に万恨を託され、江水の縁を頼って、呉に合流せんことを衷心ねがっているわけであります。