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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

――いやはや、大気な人間を容れる雅量のないおひとだ」

「では別に何か先生には、妙計大策がおありなのですか」

「もちろん。――なければ、孔明のことばは、空論になる」

「真に大計がおありならば、もう一応、主君にすすめてみますが」

「気量のものを容れる寛度をもって、もし請い問わるるならば、申してもよい。――曹操が百万の勢も孔明からいわしめれば、群がれる蟻のようなものです。わが一指をさせば、こなごなに分裂し、わが片手を動かさば、大江の水も逆巻いて、立ちどころに彼が百船も呑み去るであろう」

烱々たる眸は天の一角を射ていた。魯粛は、その眸を、じっと見て、狂人ではないことを信念した。

孫権のあとを追って、彼は後閣の一房へ入った。主君は衣冠をかえていた。魯粛はひざまずいて、再度すすめた。

「ご短慮です。まだ孔明は真に腹蔵を吐露してはおりません。曹操を討つ大策は、軽々しくいわぬといっています。そしてまた、何ぞ気量の狭いご主君ぞと、大笑していました。……もう一度、彼の胸を叩いてごらん遊ばしませ」

「なに、予のことを、気量の狭い主君だといっていたか」

孫権は、王帯を佩きながら、ふと面の怒気をひそめていた。