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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

だから当時、時人のうたう中にも、

曲ニ誤リアリ

周郎、顧ミル

という歌詞すらあるほどだった。

こういう周瑜も、今は孫策亡きあとの呉の水軍提督たる重任を負って、陽湖へ来てからは、家にのこしてある愛妻を見る日もなく、好きな音楽に耳を洗ういとまもなく、ひたすら呉の大水軍建設に当っていた。

しかもその水軍がものいう時機は迫っていた。魏の水陸軍百万乃至八十万というものが南下を取って、

我ニ質子ヲ送リ、

我軍門ニ降ルカ

我ニ兵ヲ送リ、

我粉砕ヲ受ケルカ

と、すこぶる高圧的に不遜な最後通牒を呉へ突きつけてきているという。

もとより周瑜がそれを知らないはずはない。しかし、彼の任は政治になく、水軍の建設とその猛練習にある。――今日も彼は、舟手の訓練を閲して、湖畔の官邸へひきあげて来ると、そこへ孫権からの早馬が来て、

「すぐさま柴桑城までお出向きください。国君のお召しです」

と、権の直書を手渡して帰って行った。

「いずれは……」と、かねて期していたことである。周瑜は、ひと休みすると、すぐ出立の用意をしていた。ところへ、日頃、親密な魯粛がたずねて来て、

「いま、お召しの使いがあったでしょう。