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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

徐盛も丁奉も、夫人の烈しいことばの下に、まったく慴伏してしまった。夫人はそれと見るや、車のうちへひらりと身を移して、

「それ、駈けよ。車を早めよ」と、たちまち道を急がせた。

玄徳も馬の背に伏して駈け通った。五百の兵もどかどかと足を早めた。丁奉、徐盛はみすみす眼の前にそれを見たが、趙雲子龍がすさまじい眼をかがやかせて、道ばたに殿軍していたため、空しく一行をやり過し、やがて二、三里ばかりすごすごと戻ってきた。

「やあ、どうした?」

彼方から来た馬上の二将軍は、ふたりを見かけて声をかけた。呉侯の命で後から大兵を率いてきた陳武と潘璋であった。

「実は、これこれです。如何せん先は主君の御妹、こちらは臣下。頭から叱りつけられては、どうすることもできないので……」

「何、何。取逃がしたとか。さりとは気弱な。さあ続いてこい。妹君の叱咤など何か怖れん。こちらは呉侯の直命をうけて来たのだ。否やをいわばお首にしても!」

と、馬煙を立てて追いかけた。

先にゆく夫人の車と玄徳の一行は、長江の岸に沿って急いでいたが、またまた、呼び止める者があるので、騒然一団になって立ち淀んでしまった。