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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

とうてい、このまま天下が平和に入るような兆候は、何を観ても考えられない。

荊州を中心に、今や玄徳は、孔明を師とし、関羽、張飛、趙雲などを翼尾として、日夜、軍馬を調練していた。軍事そのものばかりでなく、政策、経済、交通、あらゆる部門に、次の必然なるものの到来に備えていた。

「亮軍師。また、魯粛が呉から使いに来たそうだが、会ったらどういおう」

玄徳は、孔明に諮った。

孔明はこう教えた。

「もし魯粛が、例の問題を持出して、荊州のことを云い出したら、君には、声を放って、お哭きになられたがよいでしょう」

「そして?」

「あとは私が、よいように、そこの所を計らいますから」

やがて魯粛はこれへ着いて、堂上に迎えられ、かつ上席に請ぜられた。

「恐縮です。魯粛如きに、上座をお譲り遊ばすとは」

「なぜ、ご遠慮あるか」

「以前はともあれ、今はわが主君の婿君たるあなた様をおいて、臣下の私が上に坐るいわれはありません」

「いや、旧交を思うてのこと、左様に謙譲にせずともよい」

「でも、礼儀だけは」と、物堅い魯粛は、あくまで辞退して、横に席を取った。

だが、答礼も終って、いよいよ用件の段階に入ると、さすがにその謙虚も払って、