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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

お聞きなさい」

張松は、胸を正し、膝へ手をおくと、童子が書物を声読するように、孟徳新書の初めから終りまで、一行一字もまちがいなく誦んだ。

楊修はびっくりした。

急に、席を下って、うやうやしく、張松を拝し、

「まったく、お見それ申しました。私もずいぶん著名な学者や賢者にも会いましたが、あなたのような人物に会ったのは初めてです、……しばらくこれにお待ちください。曹丞相に申しあげて、もう一度、改めて、ご辺と対面なさるように、お勧め申して来ますから」

楊修は青年らしい興奮を面にもって、すぐ曹操のところへ行った。そして、なぜ蜀の使いにあんな冷淡な態度をお示しになったのか、とその理由をなじった。

曹操がいうには、

「一見して分るではないか。あの矯短長臂な体つきは、まるで手長猿だ。予は歓ばん」

「容や貌をもって、人物を選りわけていたら、偽者ばかりつかんで、真人を逸しましょう。そうそう、むかし禰衡という畸人がいましたが、丞相は、あの人間さえ用いたではありませんか」

「それは、禰衡には、一代の文才と、その文の力を以て、民心をつかんでいた能があったからだ。いったい張松などになんの能があるか」