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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

「心得ております」

ふたりはさり気ない顔して、元の席へ返っていた。

宴席は歓語笑声にみち、主賓劉璋の面にも満足そうな酔が赤くのぼっていた。

ときに、荊州の大将たちの席から、突如、魏延が立ち上がって、酔歩蹌踉と、宴の中ほどへ進み出で、

「せっかくの台臨を仰ぎながら、われわれ長途の軍旅にて、今日のもてなしに、恨むらくは音楽の饗応を欠いておる。依ってそれがし、剣の舞をなして、太守の一笑に供え奉る。――」

いうかと思えば、はや腰なる長剣を抜いて、舞いだしていた。

「あ、あぶない」

こはただ事の馳走に非ずと、劉璋の左右にあった文武の大将は、みな顔色を変えたが、咎める術もなかった。

すると、従事官張任という蜀の一将、やにわにまた、剣を抜いて、魏延のまえに躍り出で、

「古来、剣を舞わすには、かならず相手が立つと承る。武骨、不風流者ながら、君にならって、お相手をいたさん」と、魏延の舞に縺れて、共に舞い始めた。

閃々、たがいに白虹を描き、鏘々、共に鍔を震き鳴らす。――そして魏延の足が劉璋へ近づこうとすれば張任の眼と剣は、きっと、玄徳へ向って、殺気をはしらせた。

(剣の舞の相手よ。