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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

激しやすい張飛のごときは、

「宋忠の首を刎ねて血祭りとなし、ただちに兵をもって荊州を攻め取ってしまえ。さすれば無言のうちに、曹操へやった降参の書は抹殺され、無効になってしまう」

と、わめきちらして、いやが上にも、諸人を動揺させた。

宋忠は生きた心地もなく、おどおどして、城中にみなぎる悲憤の光景をながめていたが、

「今となって、汝の首を刎ねたところで、何の役に立つわけもない。そちは逃げろ」

と、玄徳は彼をゆるして、城外へ放ってやった。

ところへ、荊州の幕賓、伊籍がたずねてきた。宋忠を放った後で、玄徳は、孔明そのほかを集めて評議中であったが、ほかならぬ人なのでその席へ招じ、日頃の疎遠を謝した。

伊籍は、蔡夫人や蔡瑁が、劉※(「王+奇」、第3水準1-88-6)をさしおいて、弟の劉※(「王+宗」、第3水準1-88-11)を国主に立てたことを痛憤して、その鬱懐を、玄徳へ訴えに来たのであった。

「その憂いを抱くものは、あなたばかりでありません」と、玄徳はなだめて後、

「――しかも、まだまだあなたの憂いはかろい。あなたのご存じなのは、それだけであろうが、もっと痛心に耐えないことが起っている」